どうして日本ではSFは盛り上がらないのか?
もしかしたら自分がそう思ってるだけで盛り上がってたりするのだろうか?
いや、やはりそれは無いだろう。ゲーム業界みたいなとんがってる場所にいてもSF会話を楽しめる相手は限られている。自分が身を置いている周辺がそうなだけかもしれないが、なんだかんだでファンタジー勢には太刀打ちできない。 自分もファンタジーが嫌いなわけではない。だが、世の中にはファンタジーが溢れている。特にラノベ系が腐るほどある。だから、さすがに飽きるでしょ。そんなときにはSFである。だがファンタジーがホワンホワンしてるだけで楽しめるのに対してSFはガチなのである。ライトなガチもあるが、やっぱガチガチなSFがいいに決まってる。理解すればするほど楽しくなる。それがSFなのだ。
まあ、SF好きを自称してる人は沢山いる。だが、いざ話をしてみると科学とSFについて持論を展開できる人は極めて少ない。SF思考ができないのではなく、そもそもが比較論を展開できる最低限のSF知識に触れたことが無いというのが真相のようである。一昔前はSF小説をおかずに飯を食える人が周囲にゴロゴロいたはずなのだが、いつのまにか孤独なSFフェチになってしまったような感覚だ。親友にSF野郎が一人いるが、いつでも会えるわけでもないので、つまらないし、やるせないというのが本音だったりする。SFという言葉は虚構・創作という語意が含まれるがゆえに、それを共通認識できるようなSFという言葉定義は難しいのかもしれない。そんな事を言い出す僕のような暑苦しいSFマニアは鬱陶しいのも理解できるし、SFに限らずマニアックやフェチの領域に踏み入るのを避けている人が多かろうというのも想像できる。しかし、暑苦しいのではなく熱いのである。好きなものに対しては熱くなるのである。SFはその対象として無限のポテンシャルを秘めている分野なのだ。なのにSFは盛り上がってないんだぜ?何かがおかしい。。
ファンタジーに置き換えて説明すると、ヤワでライトなファンタジーだけで語られてもファンタジー好きとは認めたくないことと同じだ。ファンタジーという言葉は古典的であり人類が夢想の世界に心を遊ばせる歴史が含蓄されているものだ。だから、言葉の共有ができていないライトユーザーとヘビーユーザーが話をすると想いが食い違うのである。トールキンの指輪物語のようなエルフやドワーフが登場するハイファンタジーが好きな僕ではあるが、現代の浅い世界設定で済ませるオリジナル作品も嫌いではない。要はコンセプトがしっかりしてれば、それでヘビーユーザーも満足できると思うのだ。結局のところヘビーユーザーは考察好きであって考察に値しないコンセプトが見当たらない作品では満足しずらいと思う。興味深い要素が多いのでも何とか楽しめる。その際、矛盾は考察で欲求を消化できるが、不足は考察では埋められない。ライフワークの対象にならない作品で付加創作しながら考察するほど皆は暇はじゃない。世の中は創作にあふれている。興味の対象にならなければ次の作品にさっさと移ればよい。だから不器用・未消化であっても要素が多いほうが無難ではあるが、最低限の質を担保できるならコンセプトだけでも十分なのだ。
増してやSFはさらにヤバイ。SFには科学や人類進化、さらには未来の可能性という語意も含まれている。SFをファンタジーの小難しい版として認識している者は確実に存在していて多数派だと思われる。いや、それで間違いはない。そして小難しい物を避けて通ろうという本能は有って当たり前だ。世界の方々とお話をして比較したわけではないが日本のエンタメ文化とそれを取り巻く状況を診るに、日本では特にSFが選択肢にも入ってない人が多いように実感できる。
これには色々と理由があって、それが複合蓄積した状況として一般常識化し負のスパイラルとなっていると考えられる。エンタメ内容以前に、まず、理数系基礎教育のしょぼさや、国家や富裕層の科学技術投資のしょぼさ、が問題の根底にあると思われる。SFの前提となる科学への好奇心が削がれてしまうのだ。これはエンタメであり趣味であるSFがどうこう言う前に、かなりヤバイ状況であると思う。もちろん我が国、日本にとってのことである。
日本は資源の無い国として、その他で世界と勝負するしか無かった。それは海底資源が見つかった今でも同じ状況と言っても良いだろう(なぜなら開発が進まない)。さて、その他の一つとして技術力があったと思う。かつて日本が技術立国、科学立国と自負していた時期があることを若い人は知っているのだろうか? 一年に一回どこかの何某博士がノーベル賞を取ったという話題だけで日本は最先端を行っているのだ、という錯覚に囚われていないか? そこに興味を持てないならSFにも興味を持つことはできないと言っても過言では無いだろう。そういうことから言えるのは、SFはサイエンスフィクションであってファンタジーでは無いのである。だからこそ、リアリティがあって面白いのだ。
嘆いても日本SF状況は良くはならないのは分かっている。だけど最初の一歩。ネガティブにつながる情報がGoogle上位にあるのは何とかしないといけない。良質なコンテンツで取り囲んで相対的に沈めていくしかない前提。地味活動すぎて我ながら茫然自失となるが、SFを何とかしたいなら意図的に頑張るしかないのである。めげないぞ!